新横綱・豊昇龍 「日本の弟」との約束果たす 新たな誓いも

大相撲初場所で優勝し、パレードでファンの歓声に応える豊昇龍(右端)。中央は久保田輝哉さん=両国国技館で2025年1月26日、新宮巳美撮影

大相撲で29日、第74代横綱に昇進した豊昇龍(25)=本名・スガラグチャー・ビャンバスレン、モンゴル出身、立浪部屋=には、「日本の弟」と呼ぶ少年がいる。初場所の優勝で「弟」との約束を一つ果たしていた新横綱。さらに、その祝福を受け、最高位としての決意を新たにした。

26日の初場所千秋楽。2回目の優勝を果たし、東京・両国国技館でパレードカーに乗った豊昇龍の隣に久保田輝哉(てるちか)さん(17)=千葉県柏市=の姿があった。輝哉さんはダウン症で、豊昇龍は以前から、「今度優勝したら絶対に隣に乗せてあげる。任せておけ」と約束していた。

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特別支援学校の高等部に通う輝哉さんは小学生の頃から、地元の柏相撲少年団で相撲の稽古(けいこ)に励んでいる。母るりさん(56)が当時、「息子の世界を広げたい」と思い、習い事を探したことが始まりだった。

るりさんはスポーツクラブや英語塾に相談した。だが、障害を理由に「何かあったら責任を取れない」と、なかなか受け入れてもらえなかった。そんな中、柏相撲少年団で代表を務める永井明慶さん(42)と、るりさんが以前から知人だった縁で、輝哉さんは相撲を始めることになった。

永井さんはかつて柏日体(現日体大柏)高の相撲部監督として、高校時代の豊昇龍を指導した。輝哉さんが小学6年の時、少年団の稽古(けいこ)に訪れた豊昇龍と出会い、家族ぐるみで交流を深めていった。

豊昇龍は8歳下の輝哉さんを弟のようにかわいがりつつ、「筋肉をつけ、相撲で頑張るのは本当にすごいことだと思う」と尊敬の念を抱く。同時にるりさんを「(日本の)ママ」と慕い、「厳しいことをしっかり言ってくれる。それが一番ありがたい。自分が間違えていることは、『それは間違えている』とはっきり言ってくれる」と感謝する。

豊昇龍は関脇だった2023年7月の名古屋場所で初優勝を果たした。るりさんと輝哉さんも現地に駆けつけて支度部屋で祝福したが、早々に会場から引き揚げてしまった。その後、豊昇龍からは「2人を探したのに。(輝哉さんを)車(パレードカー)に乗せようと思っていたんだよ」と言われたという。

昨年11月の九州場所では大関の琴桜と千秋楽相星決戦で敗れて優勝を逃し、約束は果たせなかった。だが、2カ月後に待望の瞬間が訪れた。パレードカーに乗り、肩を並べてバンザイし合う豊昇龍と輝哉さんの姿を目にし、るりさんは「本当に貴重な体験をさせてもらった。あの日は息子もアドレナリンが出てしまって、家に帰ってもなかなか寝付けなかった」と話す。

29日、東京都台東区の立浪部屋で横綱昇進伝達式があった。豊昇龍の晴れ姿を見守ったるりさんは「本当に夢のよう。立派でしたね」、輝哉さんは「かっこよかった」と笑顔を見せた。その言葉を受け、新横綱は「もっとかっこよくなりたいね。頑張ります」。「弟」への誓いを新たにした。【高野裕士】

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