名護市と今帰仁村にまたがるゴルフ場跡地で整備が進むテーマパーク「ジャングリア」の開業日が発表された。
沖縄にはない形態の大型施設だ。北部観光の「起爆剤」と期待されている。この機会を地域の発展につなげる取り組みを前に進めなければならない。
同施設は興奮とぜいたくを体験する旅「パワーバカンス」をコンセプトとする。起伏ある地形を生かして、自然を堪能できる22種類のアトラクションを提供する。
15の飲食施設と10の物販施設を整備し、総工費は約700億円になる。
北部地域には年300万人が訪れる観光拠点「沖縄美ら海水族館」がある。一方、客の多くが近隣に宿泊しない「素通り観光」が課題となってきた。
運営会社は水族館を含め、2施設を訪れることで「滞在型観光」への転換を見込む。過ごす時間が長くなれば、消費額も増えると考えている。
食材や土産物で地元と連携を模索する動きも出ている。運営会社と取引を希望する事業者は500社以上で、半数が県内企業だ。
施設内では食材の7割以上に県産品を使用する予定で、農水産物の販路が拡大する可能性がある。
県内では大型投資や消費が地元で浸透せず県外へ逆流する「ザル経済」が指摘されてきた。
開業を県民所得の向上などにつなげることができるかが問われている。
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県内の2024年の入域観光客数は約966万人で過去3番目に多かった。最多だった19年の95・1%の水準で、コロナ禍前に回復しつつある。
国内客数は19年を上回ったが、外国客数は19年の72・5%にとどまる。
近隣に大都市を抱える国内の大型テーマパークと異なり、ジャングリアは商圏を中国や東南アジアに広げたい考えだ。
インバウンドの需要が高まる中、国際線を増便しようにも、那覇空港の地上職員不足などで滞っているのが現状だ。
機会損失を防ぐためには人材育成などで行政と企業の連携が欠かせない。
自然環境や住環境への影響の軽減も重要だ。
過剰な集客が引き起こす交通渋滞や騒音など、住民生活に悪影響が出るオーバーツーリズム(観光公害)が問題となっている。
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石破茂首相は運営会社の会見で、交通渋滞の緩和を目的に名護東道路の早期延伸に言及した。
だが、狭隘(きょうあい)な県内では道路延長にも限りがある。
大型施設の開業が新たな課題を引き起こさないよう、公共交通の整備検討も必要だ。
肝心なのは地域との「共存共栄」である。
これまで事業内容のほとんどが明かされてこなかった。経済界からは情報が少ないとの声も出ている。開業半年前にようやくその一部が発表された形だ。
今後も適切に情報を開示しながら地域と共に成長する施設を目指してほしい。