余命4カ月から始めた「3つのこと」 体内で関ケ原の合戦が モリタクさんが残した言葉 話の肖像画 経済アナリスト・森永卓郎〈2〉

レギュラー出演番組、ニッポン放送「垣花正 あなたとハッピー!」のスタジオにて=令和7年1月20日(同社提供)

森永さんは1月28日に亡くなられました。令和6年12月の取材をもとに連載します。

《病気を公表したのは、令和5年12月27日。レギュラー出演するニッポン放送の生番組「垣花正 あなたとハッピー!」で行った。番組終了後、その足で抗がん剤治療のため、病院に向かった》

ところが、抗がん剤が体質に合わなかったらしく、翌日から寝込んでしまった。立ってられないし、ものも考えられない。食べることもできない。数日間、イチゴを数粒口にしたきりでした。あのときははっきりと三途(さんず)の川が見えましたね。

「もうだめだろう」ということで、2人の息子も駆けつける事態になりました。

でも、そこで自分に合う薬が見つかり、抗がん剤の副作用からは何とか回復できたのです。

《余命4カ月の告知を受け、さまざまな検査を行った。しかし、当初の診断に反し、膵臓(すいぞう)にがんは見つからなかった》

がん細胞がブドウ糖をたくさん取り込む性質を利用したPET(陽電子放射断層撮影)検査というものがあります。これをやったところ、胃と膵臓に大きな反応があった。胃を精密に検査しましたが、まったく異常がない。それで膵臓だろうということになっていた。

でも、異変は見られないし、腫瘍マーカーの数値も正常。血液を米国に送って遺伝子検査をしてもらう血液パネル検査というものもやりましたが、結果は「膵臓がんではない」というものでした。

結局、大本のがんの場所が分からない「原発不明がんの終末期」という、やっかいな状態です。がんの場所が分からないから放射線治療もできない。がんの種類で異なるものを使用する抗がん剤も使えない。今は、血液の免疫細胞を増殖させて体に戻すNK療法を行っています。

《食は細いものの、食べたいものを食べ、たばこも吸う生活を送っていた》

ただここのところ、腫瘍マーカーの数値がかなり上がっている。どこかに転移している可能性はあるんです。

要するにパワーバランスなんですね。私の体内で関ケ原の合戦みたいなものが起こっていて、がん細胞と免疫細胞が戦っている。バランスが崩れると一気に悪くなるんですよ。

だから今は何ともないんですけど、1カ月先にどうなるかは全く見えない。多分2、3カ月は大丈夫だと思います。

《無駄が嫌いで「1秒でも余っていたら何かをする」という。残された時間で何をすべきかを考えた》

やりたいことが3つ思い浮かびました。

1つ目は、さまざまなタブーに挑んだ「書いてはいけない」(三五館シンシャ)という本が執筆の途中で、どうしても完成させたかった。これは昨年の3月に無事出版されベストセラーになりました。

2つ目に、独協大経済学部教授として、前年に入ってきた森永ゼミの2年生たちにきちんと「モリタクイズム」を教え込みたかった。

そして、3つ目にラジオのリスナーのことを考えました。病気の告知後、リスナーから、私のもとに何千何百というメッセージが来たんですね。内容はほぼ同じで、「あなたの声は私たちの生活の一部として組み込まれている。だから、どうか休まないで続けてほしい」というものでした。これはとてもうれしかった。

だから、6年1月に抗がん剤の副作用から回復するために2週間ほど入院したときも、病室からリモート出演したんです。結局、全部で5つあるラジオのレギュラーは一回も休みませんでした。(聞き手 岡本耕治)

Leave a Reply

Your email address will not be published. Required fields are marked *