【深掘り】なぜ恐竜?ジャングリア・森岡氏語る興奮と勝算 北部の“素通り”打破なるか 沖縄

テーマパーク「ジャングリア沖縄」施設概要を説明する刀の森岡毅CEO=28日、東京都のサンケイプラザホール

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島袋 良太 ベールに包まれてきた本島北部のテーマパーク「ジャングリア沖縄」の概要が28日、明らかになった。記者会見で刀の森岡毅CEOは、沖縄から空路で4時間圏内のアジア20億人の市場をにらみ、観光需要の取り込みによる沖縄経済への貢献や、成功モデルを海外へ波及させる展望を語った。開業が半年先に迫った投資規模700億円の事業計画は、どんな影響をもたらすのか。

28日に概要が発表された、名護市と今帰仁村にまたがる大型テーマパーク「ジャングリア沖縄」。これまで沖縄になかったタイプの観光施設が生まれることで、本島北部、そして沖縄観光全体の起爆剤となるかが注目される。

年間約300万人という集客力を誇る沖縄美ら海水族館がある本島北部だが、多くの観光客は中南部に宿泊するため、日帰り訪問が多く、「素通り観光」になってきたと指摘される。想定滞在時間約6時間のジャングリアが水族館と合わせて「1泊」の需要を生むことで、観光客の消費単価を上げ、高付加価値な観光エリアの創出につなげたい考えだ。

ジャングリア沖縄のパークマップ(画像提供:ジャパンエンターテイメント)

開業するのは、マーケティングを手掛ける刀(大阪府)と子会社のジャパンエンターテイメント(JE、名護市)。刀を率いてきた森岡毅氏は、かつて大阪のテーマパークUSJの幹部として沖縄進出を企画したが、同社が買収され計画は立ち消えた。10年以上を経てのテーマパーク開業の実現となる。

森岡氏は沖縄が経済成長を続けるアジア各国に近い利点を挙げた。今回、海外客の入場料を国内客に比べ約2割高く設定したが、それでも4~5年後には来場者の過半をインバウンド(訪日客)とする目標を掲げた。長期的には海外でのパーク開業も見据える。

そんな刀とJEが目玉コンテンツとして投入したのが「恐竜」だ。従来の「沖縄らしさ」とはかけ離れているが、同社が事前に実施した市場調査で、海外の客層にも分かりやすく伝わる「自然」を生かしたコンテンツとして浮上した。森岡氏はこの日の会見で「恐竜は陳腐化しない。世界中の人たちが恐竜に追いかけられると興奮する」と勝算を語った。

もう一つのコンテンツが「ジャングリアエクストリームズ」と呼ばれる七つのアトラクション。高いところから落ちたり、つり橋を渡ったりするスリルを楽しむ内容だ。このスリルを味わいながら生い茂る森、広い空、遠くに見える海など「大自然」の風景を楽しめる。

FINDING DINOSAURS ファインディング ダイナソーズ(画像提供:ジャパンエンターテイメント)

刀はこれまでも居抜き物件を活用して初期コストを抑えつつ、そこにあった資源を最大限活用する施設運営を強みとしてきた。今回も700億円とテーマパーク整備にしては投資規模が絞られる中、広大なゴルフ場跡地を活用し、沖縄らしい自然の風景そのものを“設備”として活用する。まずは中規模で事業を始め、利益を出しながら拡大を目指していくビジネスモデルだ。

刀は需要予測に基づく施設運営の効率化も強みとする。こうした新たな手法が沖縄観光にどのような変革をもたらすのかも注目される。

反面、「自然」をテーマに選定した場所なだけに、開業を半年前に控えた今も、道路など周辺のインフラは脆弱(ぜいじゃく)な状態だ。渋滞などの懸念も指摘されており、交通体系を含む北部観光全体の構想練り直しも不可欠だ。この日は石破茂首相も登壇し、事業への後押しを改めて表明した。国や県、市町村、地元関係団体などと密な関係を築き、施設規模と周辺インフラの「アンバランス」解消や、オーバーツーリズムによる弊害などへの対応も待ったなしの課題だ。 (島袋良太)

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